スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

(5)

D様

庭のアジサイは小さい花を開きかけています。
この花は雨が好きなのですね。
今朝の雨を心地よげに受けていました。

昨日の午前中、私は家中のコンセントを掃除しました。
朝のテレビ番組で、コンセントの中の埃が原因で、火災になることがあると言っていたからです。
掃除機でコンセント部分の埃を入念に吸出しました。

幸いにして私の家は、コンセントの数が多いのでタコ足配線はありません。
就寝中に使っている電力は冷蔵庫と炊飯器のタイマーだけです。冷蔵庫は専用のコンセントです。
炊飯器は延長コードを使っていますが、タイマーだけですから大した電力は使いません。(その部分の埃は、今日、特に念入りに吸出しました。)
他のコンセントは全部抜いてから就寝します。
ですから、私の家ではコンセントからの火災はまずあり得ません。

こんなことをあえて書く理由は、被害者であればすぐ分かるはずです。
D様、あなたもその意味をにすで理解なさったことと思います。

さて、前回の手紙で私は、昨年7月の出来事を書くと予告しました。
それを書こうと思います。

まず、私の家には犬が1匹と猫が2匹います。犬は雑種です。
地方紙の読者交流の欄に、「子犬の飼い主を探してます」との記事が載っていたのが縁で飼うことになったのです。最後の一匹だということで雌でした。

利口そうな子犬でした。
親犬から離して車に乗せる時も、自分の運命を悟ったかのように大人しく従ったのでした。
私はこの子犬をパルと名付けました。13年前のことです。
パルは飼い主には忠実ですが、ほかの人には中々なつかない犬でした。
だから番犬には適任でした。

さて、昨年7月末の深夜のことー。
私は、パルの激しく吠える声で目を覚ましました。
パルは数ヶ月前から、夜中に激しく吠えることが多くなっていました。
気になっていたのですが、眠気が先立ち、起きて外に出て行くことはありませんでした。
そして、朝になって、確認しなかったことを後悔するのでした。

しかしその夜、私は反射的に飛び起きました。そして、枕元の懐中電灯を手に取るなり裏口から外に出ました。

懐中電灯で犬小屋の方を照らして見ると、激しく吠えるパルの前方に誰かがうずくまっていました。
「誰?!」
私は声を上げました。

その男はそこにしゃがんだまま、私の方に顔を向けました。
「何してるんですか! こんな時間に!」
私は心臓を高鳴らせながら、その男に聞きました。
懐中電灯の明かりに浮かんだ風貌は、真面目な勤め人というタイプではありません。
どこかすさんだ印象でした。

「俺、犬が好きだからね。」
男は立ち上がりながら言いました。居直ったようなふてぶてしい態度でした。
「いくら犬が好きだからといって何ですか、こんな夜中にー」
パルは激しく吠えてたのです。にもかかわらず、あえて敷地内まで入って来るのは通常ではありません。

男は柄模様のシャツに黒のズボンといういでたちで、40代後半に見えました。
「俺、何かお宅に損害かけた? 何もしてないでしょうが」
「こんな時間に他人の家の敷地に入ってくるなんて、おかしいんじゃないですか」
「俺、何かした? お宅で何か損害受けた?」
男は同じことを繰り返しました。
「私有地への不法侵入ですよ。警察を呼びますよ」
私は一応、この男の身元を確認して貰おうと思ったのです。
そう思ったのには理由があります。

その半年ほど前のことー。
その夜もパルが激しく吠えました。
私は夢うつつでしたが、人が走る音を聞きました。
しかし、パルは間もなく鳴き止みましたので、私は通りがかりの人を吠えたのだろうと思い、また眠りに入ったのでした。

翌朝、私はいつもの通り、別棟の事務所の前まで新聞を取りに行きました。
その時、事務所のサッシ窓が、いつもより大きく開いていることに気が付いたのです。
窓は猫が出入りするので、夜は少し開けておくことにしていました。
猫が通れる位の幅ですから、そんなに大きく開けているわけではありません。

私は、「あれっ?」と思い、近くまで行って確認しました。
やはり、私が開けておく間隔より窓は大きく開いてました。
更に、窓際に置いてあった三つの鉢植えが内側に倒れていたのです。

誰かがそこから侵入したような形跡です。
「まさか・・・」
私は慌てて事務所に入ると中を確認しました。
高価なものが置いてある訳でもない、質素な事務所ですが、泥棒が入ったとなれば一大事です。
中に入り、様子を確かめました。

部屋全体に視線を這わせましたが、特に変わった様子はありませんでした。
窓際に置いた鉢植えが倒れてるだけでした。
一応、机の引き出しを開けてみましたが、何も変わっていません。
私は、窓際に倒れる鉢植えを起こしながら安堵しました。

昨夜、パルが吠えたのはこの侵入者に対してだったのだと思いました。
窓から侵入しようとした者は、パルに激し吠えられて、中に入ることを途中で断念したのでしょう。


夫と相談した結果、警察には届けないことにしました。
実害はなかったし、その日、私たちは朝から出かける用事がありました。帰るのは夜遅くになる予定で、届け出にかける時間はありませんでした。

その後、事務所の戸締りは厳重にしました。猫の出入りために窓を開けておく事は止めました。
(猫は夜間、母屋にだけ出入りするようにしました。)


深夜に犬小屋の前にいたその男は、半年前のその出来事を思い出させたのです。
この男が半年前の件の犯人だと言うわけではありませんが、警察に身元を確認してもらった方がいいと思ったのです。

「何で警察なのよ? 俺が何したの。何か盗んだ? 暴力ふるった?」
男は、ジワジワと敷地から道路の方へ後ずさりしながら言いました。
「とにかく身元確認だけさせて下さい」

私は、家の中から携帯電話を持ってこなければなりませんでした。
その間にこの男が逃げてしまうことは当然考えられます。
私は夫が寝ている部屋に向かって大きな声を出しました。
「おとうさん! おとうさん、ちょっと起きて!」

夫は何事かと驚いたような顔で起きてきました。
私は事情を話し、電話を取りに家の中に入りました。

いつも置いてあるところに携帯電話がなく、家の中を探し回ったあげく、洗面所で見つけるまで5,6分かかったと思います。そして、急いで外に出ていくと、夫だけで男はいません。

「あれっ? どうしたの?」
「帰してやったよ、名前と住所を聞いたから大丈夫」
私は人のいい夫にあきれました。
「名前と住所なんていくらでもデタラメが言えるじゃない!」
「こんな夜中に騒いでいることないよ。苗字はうちと同じだよ。」

夫は住所と名前を聞いたと言いましたが、町内の大まかな地名と苗字を聞いただけでした。うちは日本国中どこにでもある平凡な苗字です。
私はやりきれない思いで夫に背を向け、家に戻りました。
居間の時計を見ると午前2時半でした。

ここ数ヶ月、深夜にパルが激しく吠えることが多くなっているし、私は身の回りの異状を感じていました。(この異状については今後の手紙のなかで、折にふれ書いていきます。)
その男の身元は、何としても確認しておきたかったのです。
私は床に入っても、夫への怒りで中々寝つけませんでした。

翌朝、私は夫に「昨夜のことは、警察に届けた方が良かったと思う」と言いました。
そして、今日でも遅くないから「届けようと思う」と言ってみました。
夫は、「(自分は)出かける用事があるからいないけど、届けたければそうすればいい」とのことでした。

結局、私は午前中に管轄の警察に電話をしました。
間もなく、2名の警察官が家に来ました。
警察官たちは男がいた場所を確認し、家の周りをあちこち見ていました。
その後、家の中に入り私から事情を聞き始めたのです。

私は犬が吠えてからのことを有りのままに話しました。
そして、被害届というのではなく、不審なことがあったので届け出るという形だったと思いますが、書面を作成しました。警察官たちが言うには「その時にすぐ連絡をして欲しかった」とのことでした。
この程度のことを、後になってわざわざ捜査はしないのでしょう。


その後、私は身の回りに不可思議なことが起こり続け、心身共に疲れる日が続きました。
その不審な男の件もいつしか忘れてしまっていました。

しかし、それから4ヶ月ほど経った10月末、突然、その件で警察から私に対し電話が入りました。
それはおかしな電話でした・・・。


D様、今日は少し疲れてしまいました。
その電話の内容は、次回の手紙で書くことにします。


                                  2009.6.25
                                         万 留 子



                             
                             

テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

最新トラックバック

プロフィール

ミセスまるこ

Author:ミセスまるこ
命ある限り書き続けます。

記事のアップが遅くなってしまいました。お詫び致します。

記事をアップしようとすると、動作がフリーズするのです。異様な重さのあと、「表示できません」の画面となります。
接続診断をしても、問題はなく・・・遠隔操作による悪質な妨害だと考えています。

アップまでに何時間もかかってしまいました。それでも、私は書くのを止めることはありません。今後とも応援していただければ幸いです。


人気ブログランキングへ



<初めて御訪問の方へ>

この小説は、どの回もほぼ独立した形式になっています。繋がりがあるとしても、その回の前後だけです。でも、時間があれば(1)から読んで頂ければ嬉しく思います。そして、今後ともよろしくお願い致します。
尚、この小説は事実をもとに書かれています。


<記事の更新>
毎週木曜を予定

※この小説の舞台となっているのは下記の地域です。

福島県双葉郡富岡町本岡字本町


※上記写真の犬を見かけた方は御連絡下さいますようお願いします。今年8月に、突然、いなくなりました。

最新記事
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。